その日も、私は一生懸命、業務用エアコンクリーニングの仕事をした後、セントラルにサウナに入りにいった。
今日のエアコンは分解が難しかった。1方向でキャビネットが邪魔をして、エビぞりしながらやった。大変だったな。今日は、ゆっくりと家でおいしい酒でも飲もうかな。
そろそろ寒くなってきたので、やはり熱燗だな。そういえば2リットル900円の安い熱燗用の酒がまだ残っていたかな。
そう思ってそろそろ帰ろうかなとロビーにいたら、ちょうど女房がやってきた。
女房は、ヨガ教室にたまに行くようになったのだ。もちろん、最近はお風呂だけという事も多いが。。。
私はちょうどいいと思い、女房に聞いた。
「おい、まだ酒あったっけ?」
「あるよ〜。」
という事で、なかったらマイバスケットで買おうと思っていたが、あると聞いたので、そのまま帰った。
家に帰ってみると、紙パックがない。まさかと思って、冷蔵庫を開けるとそこには、900リットルの高い大吟醸が有った。
そういえば、先月清水の舞台から飛び降りたつもりで買ったっけ。でもあまりないと思っていたのだが。。。
しょうがない。今日は熱燗はやめて、ロックだな。なんせ、大吟醸だ。熱燗ではもったいない。
しかし、女房よ、おれは熱燗が飲みたいと思って「酒は有るか?」と聞いたのに、あるといってもそれは大吟醸ではないか。それならそう言えよな。
飲んでみて、「でも大吟醸はやはり、いいな。安い酒とは全く違うな。」と思った。
さすがだ。こんなおいしい酒は熱燗ではもったいない。熱燗の気分だったが、冷やでもこれだけうまければ、それもまたよしだな。まあ、今日はこれで満足しよう。しかし、うまい。
私も人生を長く生きて、ようやく、酒のうまさがわかってきたのかもしれない。
そう思っていると女房が帰ってきたので、私は言ってやった。
「俺が、飲みたかったのは、本当は熱燗だ。酒が有るかと聞いたのは、安い酒の事だったのだが、わからなかったのか?」
そう言ってやると、女房が言った。
「わかってるわよ、そんな事。それ、安いお酒よ。紙パックが捨てたかったから、大吟醸の入れ物に、移しただけよ。」
おしまい。