仕事の途中で食事をすることになり、王将の餃子に行った。
カウンターに座った。
注文が出てくるまで待っていたら、カウンターの反対側で店員さんが餃子を作っていた。見事な手さばきである。
これが私のプライドに火をつけた。私はとても器用な男だ。こんなところで負けるわけにはいかない。
私は店員に合わせる格好で、餃子を作り始めた。そう、エアー餃子だ。
左手で皮、右手はスプーンをもち具をとって、皮にのせて皮を包む。
最初はやはりなかなかうまくいかなかった。餃子、恐るべし。
しかし、30個くらい作ったところで、大分慣れてきた。
そしてついにその瞬間は来た。私は店員のスピードを抜き、彼よりも多く餃子を作ることに成功したのだ!
やった、やった、わたしはついにやり遂げた。なんという充実感。エイドリア~~~~ン。両手を挙げて叫びたい気分だ。
しかし私はやはりさすがの人間だと思った。わずか30個の餃子を作っただけで、ベテランの店員の長年の技を超えてしまったのだ。
完全に両手のリズムを体で習得できたのだ。
頼んでいたちゃんぽんが来たので、満足して食べた。とてもおいしかった。
仕事が終わり家に帰ると、なんと女房が餃子を作っていた。なんとタイミングの良い事か!
私の目がきらりと光った。お前は日本餃子早作り大会最優秀チャンピョン、永世名人の称号を持ち、王将にこの人ありと謳われる私の前で餃子を作るとはなんと度胸のある人間よの~。そんな気分だ。
「俺に任せろ。」私は言った。
エアー餃子では1個5秒もかからなかった。
全部で30個か。3分もかからず作り終わってしまう。
女房は少し不思議そうに私を見たが、私は、「まあ見ておきなさい、ふ、ふ、ふ。」と余裕を見せて、作り始めた。
1個作るのに、3分かかった。というか、1個もまともに作れなかった。
私はその王将の方角を向き「参りました。」と頭を下げた。
エアーはダメだなと、痛感した。
おしまい。